19BYの酒造りも無事に皆造を迎え、新酒が出揃いました。
今回は、その中でも特にお燗で映えそうな、車坂 純米無濾過生原酒を味わいます。
まずは常温で。
生原酒らしい芳醇な香りを感じます。生まれてから3ヶ月ほど経過していますが、しぼった当時の味とは違って、ずいぶんと口当たりが柔らかくなっています。
前半は軽い甘みと旨味、その後にやや強い酸が、新酒らしさを主張します。この温度では、お酒だけでも十分味わえますが、煮魚、特に今回のような平目の内臓の煮物の、濃厚な甘辛さもしっかり受け止める強さがあります。
さて、いつものように思い切って50度以上まで温度を上げてみます。
心配していた生酒特有の香り(生燗臭)はほとんど感じられず、逆に通常の火入れした純米燗酒のような、お米由来のふくよかな香りが広がります。しかし新酒なので、いつもより新鮮で元気な香りです。
甘さはほとんど感じられず、前半から旨味と、ワンテンポ遅れて酸が追いかけてきます。
やや熱めの温度ともあいまって、芳醇でありながらキリッとした燗酒に仕上がりました。
季節のお刺身では、鰹や蛍烏賊、甘海老の濃厚な甘み旨味を受け止めつつ、気持ちよく切ってくれます。
そのまま温度が下るのを待って、40度以下(体温よりやや高め)あたりでひと口。
前半は甘みが感じられますが、すぐに酸が追いかけて味全体に広がります。この温度では旨味はそれほど強く感じず、ややおとなしくなった印象を受けます。
金目鯛のカマや、のどぐろといった甘みに特徴がある焼き魚と合わせると、それぞれの味の要素が補完し合ってすいすいと杯が進みます。
さらに、燗冷まし状態(30度以下)でひと口。
香りはすっかり控えめになり、生原酒らしい印象もなくなって、普通のぬる燗といった味わいです。味のバランスは、前半は軽い甘みのあとにやや旨味を強く感じますが、後半では中心に甘み、周囲に軽い旨味とやや強い酸といった、複雑な構成になりました。
のれそれ(八目鰻の稚魚)、鳥貝といった、こちらもやや複雑な味わいのお刺身と合わせると、適度に味を相殺して、意外なほど軽めのお酒に感じました。
生原酒のお燗は、非常に難しい印象がありますが、気負うことなく試してみて下さい。
常温で味わってみて、甘みよりも旨味や酸をしっかり感じたら、それほど外れることなく燗映えするお酒となるでしょう。
■撮影協力
海の幸 さらむむ
大阪市阿倍野区阿倍野筋3丁目10番 B-0205
あべのベルタ 地下2階 TEL06-6649-7309
■ 車坂 純米無濾過生原酒(19BY)

滋賀県産玉栄を65%という低精白で仕込んだ純米酒。
生原酒はこの春限定(200本)。秋以降の熟成した味わいも乞うご期待。